建設業の許可区分の見直しや新たな許可制度の創設を検討
令和5年3月29日に開催された持続可能な建設業に向けた環境整備検討会において、現行の建設業許可制度の見直しと現在許可が不要とされている500万円未満の建設工事の請負に関する新たな枠組みの創設について言及がありました。
どちらの問題も、「中・長期的な課題として検討する」とされているため、近々に対応が必要というものではありません。しかし、多くの建設業者が許可を取得しているため、今後の動向については気にかけておく必要があるかと思います。そこで、概要をまとめましたので、参考としていただければ幸いです。
重層下請構造は許可業種の多さが原因?
国土交通省は以前から重層下請構造を適正化の必要性があると考えていました。
元請から下請、さらにその下請へ、というように工事が次々に下請に出されることで、様々な問題が生じると考えられているからです。
具体的には、施工に関する役割や責任の所在が不明確になる、現場施工時の管理が行き届かないことで、工事の質・安全性が低下するのではないかと言われております。
今回の検討会において、このようなデメリットを生み出す重層下請構造の原因の1つとして、現行の建設業の許可業種の多さが挙げられたのです。
建設業の許可業種は全部で29種類あり、確かに多いのかもしれません。しかし、事業者が自身の行う工事の実態に応じて必要な許可を取得していますし、それだけ専門性が求められる業界であることも確かです。
そうした実態も踏まえて、現行の許可制度のあり方や合理化について検討が求められるとしながらも、「単純に許可業種を集約すれば良いというわけではない」とも明記されています。
どのような方向性になるかは現状では不明ですが、許可制度の変更があった場合の影響は大きいと考えられるので今後も注視が必要です。
500万円未満の工事を請け負う事業者にも行政の関与を
今回の検討会において、軽微な建設工事を請け負う事業者を対象として、届出制や現行の許可よりも簡易な要件を課す許可制の創設を検討してはどうかとの提言がされました。
現行制度では、500万円未満の建設工事(建築一式工事の場合は1,500万円未満)を請け負う場合、建設業の許可が不要となっています。こういった工事を中心に請け負っている事業者にしてみれば、許可申請のための面倒な書類手続きなどを行う必要がなく、1つのメリットとなっています。
一方、行政の側からしてみると、こういった事業者の存在を適切に把握することができません。仮に違法なことを行っていたとしても、十分な監督機能が果たせないことにも繋がります。
行政の目が行き届かないことを逆手に取り、悪質な業者がはびこらせる制度的な温床となっているのでは?との懸念から、「こういった事業をやっています」と行政に知らせる届出制を創設、または「こういう事業をやりたいので、許可してください」と行政に審査をお願いする許可制を創設することが提言されたのです。
届出制と許可制とでは大きな違いがありますが、行政が関与するという点では共通します。
行政が事業者の存在を認識することで、何か問題が生じたときには必要な対応を執ることが容易になりますし、事業者に対する一定の牽制効果も期待できます。
いつどのような形で新たな枠組みとなるかは明らかではありませんが、建設業者全体に影響が及ぶことになるため今後も注視が必要です。
まとめ
今回の検討会において、建設業許可の見直し、新たな許可・届出制度の創設が提言されました。
この提言を受けて国がどのように制度設計をしていくかは今後の議論の行方次第ですが、注視していくことが必要です。
国の動向は建設業界に大きな影響を与えます。
今後も気になる動きがあれば、随時情報提供していきますので参考としていただければ幸いです。
出典:国土交通省HP 持続可能な建設業に向けた環境整備検討会 第9回資料
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/tochi_fudousan_kensetsugyo_const_tk1_000001_00021.html